怖い話

 

「迷子の人形」

 

ある日、少女が母親と一緒に古い蚤の市を訪れました。そこで彼女はひとつの古びた人形に目を奪われました。人形は綺麗なワルツの音楽を奏でながら回転しており、少女はその美しさと不思議な魅力に引かれました。

 

少女は母親にその人形を買ってもらいたいと頼みましたが、母親は少し躊躇しました。しかし、少女の懇願に折れて人形を買ってあげることにしました。

 

人形は少女の部屋に飾られ、夜になるとワルツの音楽が流れ始めました。少女は喜んで眠りにつきましたが、その夜から奇妙な出来事が起こり始めました。

 

夜中になると、少女は急に目を覚まし、人形がワルツを踊っているのを見つけました。しかし、それは普通の踊りではありませんでした。人形は生気を帯び、恐ろしい笑顔を浮かべながら踊っていたのです。

 

少女は恐怖に襲われ、母親に相談しましたが、母親は彼女をなだめるばかりでした。母親は人形がただのおもちゃであると言い張り、少女の話を信じようとしませんでした。

 

しかし、不気味な出来事は続きました。少女は夜ごとに人形の笑い声や足音を聞くようになり、人形が勝手に動く様子を目撃しました。彼女はますます心を病み、人形の存在に怯えるようになりました。

 

ある晩、少女は人形が彼女を追いかけてくる夢を見ました。夢の中で人形は恐ろしい声で彼女に脅しをかけ、自分の中にとどまるよう命じてきたのです。

 

恐怖に駆られた少女は、ついに我慢できなくなり、人形を抱えて家を飛び出しました。彼女は人形を捨てるために遠くの川に向かい、そのまま川に沈めました。

 

人形が水に沈むと同時に、少女の心にも重い負担が解放されました。彼女は安堵の息をつき、家に戻り母親に全てを打ち明けました。

 

それからというもの、家には再び平穏が戻りました。人形は二度と現れることはなく、少女と母親は怖い出来事を忘れるように努めました。しかし、少女は今でもあの人形の不気味な笑顔を忘れることはありませんでした。